あぁなんて素敵だろう。この美しい竹籠をぶら下げてパン屋さんに行く、または手作りのパンやお菓子を詰めてお出かけする。この竹籠を見つけてそんな憧れを抱いていました。しかし不要不急という言葉が叫ばれる中、決して必要なものではなく、かつ値段も値段ですので購入を見送ってきました。 そして時が経ち、生活にも余裕ができ、ついに手に入れたのです。この竹籠を。玄関をウロウロして宅配便を迎え、はやる気持ちを抑え丁寧にガムテープを剥がし、段ボールという名の玉手箱を開けました。その瞬間私の憧れが崩れ去ったのです。チープな雰囲気を纏いながらもなお誇らしげな佇まいに私は苛立ちさえおぼえました。しかし、幾年の後に艶と風合いを増せば或いは… その後ハンドルとフタの点検中に気付いた事実は私の崩れ去った憧れをさらに粉々に粉砕しました。なんと蓋が横方向に1センチ近くズレていてハンドルを上下すると干渉してしまうのです。実用性を損なう程の粗雑さを手作りの味わいというオブラートに包んで無理やり飲み込んだのでした。 そして次の事実は、もはや粉微塵と成り果てた私の憧れを彼方へ吹き飛ばしました。私はこの日の為に素敵なカラシ色の麻の風呂敷を用意していました。私の思惑通り竹とカラシ色はこの上ない絶妙な組み合わせでした。一旦風呂敷を外そうと試みたとき嫌な感触が指を伝わりました。竹の内側はささくれだらけなのです。これでは最高のパートナーである竹と風呂敷は着脱の度に互いを傷つけることになります。なるべくそのままにしたいところですが、私は竹籠にパンを入れるのです。汚れたらすぐ洗うのが洗濯のキホンのキであり頻繁な着脱は避けられません。ラップを使えば汚れは防げますが、それでは竹籠が竹籠である意味を失いただのお飾りと成り下がることを意味します。私は飾りとしてではなく、あくまでも道具としての竹籠に憧れたのです。 果たしてささくれが耐久性や実用性にどれだけの影響を与えるかはまだ分かりませんが、率直な感想として、購入前に実物を手に取っていたら確実に買わなかったであろうということです。しかし買ったからには道具としてガシガシ大切に使っていきます。そのなかで愛着も湧いてくるものです。 エイジングに期待して。